子宮筋腫

30歳以上の女性の4人に1人は子宮筋腫をもつといわれています。良性腫瘍ですが、貧血や痛み、周辺臓器圧迫など様々な症状を誘発することがあります。しかし大半の人は無症状であり、気づかないまま過ごしている場合が多いです。筋腫は卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)により大きくなり、閉経すると小さくなります。また複数個できることも多いです。大きさやできる部位によって症状が異なります。できる部位によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に大別されます。

症状

おもな症状は、月経量が多くなることと月経痛です。その他に月経以外の不正出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)などがあります。大きさや個数を気にされる方が多いですが、実は症状はできる部位と相関することが多いです。子宮の内側にできた筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は大きくなっても症状がでない傾向があります。そのため、治療が必要かどうかもできた場所や症状によって異なりますが、不妊症や流産の原因になることもあります。

診断方法

内診と超音波検査で診断します。大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査をすることもあります。大きな筋腫は悪性の子宮肉腫との鑑別がむずかしいことがあります。ちなみに大きな筋腫の約0.5%は子宮肉腫といわれています。MRI検査結果や大きさ、年齢、大きくなるスピードなどを総合的に判断します。一般的には子宮筋腫が悪性化して子宮肉腫になることはないとされています。

治療法

小さい筋腫や無症状の場合は治療の必要はありません。治療法には手術と薬があります。手術では子宮を取ってしまう術式(子宮全摘術)と筋腫だけを取る術式(筋腫核出術)があります。将来子供がほしい人や子宮を残す希望の強い人では筋腫核出術を実施しますが、手術の際、出血が多くなるのが難点ですし、小さな筋腫が取り残される可能性があり、術後に子宮筋腫が再発してくることもあります。最近、腹腔鏡を使う手術が主流ですが、大きさやできた場所によっては腹腔鏡での手術がむずかしい場合もあります。

子宮筋腫を根治させる薬はありません。しかし薬で子宮筋腫を小さくしたり、出血や疼痛などの症状を軽くすることができます。薬の治療には、GnRHの拮抗剤(アゴニスト)による月経を止める治療(偽閉経療法)が行われます。この治療では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでたり、骨量が減少するおそれがあるため6ヵ月以上の治療はできません。治療中で一時的に子宮筋腫は小さくなりますが、治療を中止すると元の大きさに戻るのが普通です。したがって、薬による治療は、手術前の使用や、閉経が近い年齢の方に実施して閉経に持ち込む(逃げ込み療法)などの一時的治療として行われることが一般的です。そのほか、ピルを服用することもあります。女性ホルモン量の少ないピルを使うことで、筋腫が大きくならず、症状も楽になることがあります。その他の治療法として、子宮を栄養する血管をつめてしまう治療法(子宮動脈塞栓術)やラジオ波による焼灼術もあります。

子宮筋腫は3~5人に1人が持っている腫瘍です。症状がない場合や悪性を否定できる場合は、あまり気にされることは無いと考えます。

公益社団法人 日本産科婦人科学会HP「産科・婦人科の病気」より一部転載