卵巣腫瘍

卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常では2~3cmぐらいの大きさです。ここに発生した腫瘍が卵巣腫瘍であり、大きいものでは30cmを超えることもあります。卵巣腫瘍には様々な種類がありますが、その発生起源から表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍などに大別され、それぞれに、良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。ここでは頻度の高い良性卵巣腫瘍について解説します。なおチョコレート嚢胞につきましては子宮内膜症の項目をご参照ください。

漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ):
腫瘍の中に淡黄色透明の粘稠度の低い液体がたまり、水風船のように単房性で薄く平滑な壁に包まれています。悪性化する可能性は基本的にはありません。
皮様嚢腫(ひようのうしゅ[デルモイド]):
比較的若年女性に多く、内部に皮膚組織、毛髮、脂肪、軟骨、骨などの成分を含みます。若年者で癌化することはまずありませんが、高齢者に発生すると稀に癌化することがあります。
粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ):
腫瘍の中に粘稠度の高いネバネバとした液体がたまります。多房性であることが多く、内部が平滑な壁で仕切られています。悪性腫瘍との鑑別がむずかしい場合があります。
チョコレート嚢胞:
子宮内膜症の記述をご参照ください。

症状

卵巣腫瘍の症状には腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などがありますが、小さいうちは無症状で経過することが多く、大きくなったり腹水がたまったりしてから症状が出現することが多いのです。時に腫瘍が破裂したり、茎捻転といって腫瘍がお腹の中でねじれてしまうと突然の強い下腹部痛が出現することもあります。

診断方法

診断の手順としては外診・内診と超音波検査が行われ、卵巣腫瘍の有無を診断します。また良・悪性の診断も重要です。超音波検査により腫瘍が嚢胞性(袋状)の場合の多くは良性腫瘍ですが、充実性部分(かたまりの部分)と嚢胞性部分が混在する場合や全体が充実性の場合などでは悪性腫瘍や境界悪性腫瘍を疑います。さらに、くわしく調べる必要があると判断された場合、MRI検査や腫瘍マーカーの測定が行われます。しかしながら、その精度には限界があり、最終的には手術で摘出した腫瘍の病理組織検査によって診断が確定します。

治療法

良性腫瘍と判断できる場合は、必ずしも治療は必要ありません。しかし悪性の可能性が否定できない、症状がある、腫瘍のサイズが大きいなどの場合は治療が必要になります。

治療は手術療法が原則です。手術の目的は症状の除去と悪性腫瘍の否定です。術前の諸検査により良性腫瘍と診断された場合、腫瘍だけを摘出し、卵巣実質を温存する術式が選択される場合が多いです。また、最近では腹腔鏡下手術が主流です。腫瘍の大きさや性状、腹部手術の既往などによりその適応は制限されています。