子宮体がん

子宮上部の部分を子宮体部と呼び、同部に発生するがんを子宮体がんといいます、近年、食生活の欧米化にともない子宮体がんは増加してきています。そのほとんどは、卵巣から分泌されるエストロゲンの作用をうけて、子宮体部の内側にあり月経をおこす子宮内膜という組織から発生するため、子宮内膜がんとも呼ばれています。

どんな人に多いか?

子宮体がんには女性ホルモン(エストロゲン)との関連が深いI型と、関連のないII型があります。

I型子宮体がん:
エストロゲンには子宮内膜の増殖を促す作用があり、エストロゲン値が高い方では子宮内膜増殖症という前がん病変を経て子宮体がんが発生することが知られています。出産歴がない、肥満、月経不順(無排卵性月経周期)がある、エストロゲン製剤だけのホルモン療法を受けている方などがこれにあたります。そのほかにも高血圧、糖尿病もリスクファクターと認識されています。
最近、国立がん研究センターから興味深いデータが発表されました。コーヒーを週2日以下飲むグループの子宮体がんリスクを1とすると、1日1~2杯、3杯以上飲むグループではそれぞれ、0.61、0.38とリスクが低下したという報告です。とはいっても飲みすぎには十分ご注意ください。
II型子宮体がん:
上記ようなエストロゲン分泌と関連なく生じる体がんもあります。このようなタイプはがん関連遺伝子の異常にともなって発生するとされ、比較的高齢者に多くみられます。
最近のトピックスとして、大腸がんや子宮体がん、卵巣がん、胃がん、小腸がん、肝胆道系がん、腎盂・尿管がんが集中する家系があり、リンチ症候群と呼ばれています。血縁者にこれらのがんを患った方がいる方は注意が必要です。

症状

一番多い自覚症状は不正出血です。子宮頸がんにくらべ、子宮体がんになる年代は比較的高齢ですから、閉経後あるいは更年期での不正出血がある時には特に注意が必要です。閉経前であっても、月経不順、乳がんを患ったことがあるなどということがあればやはり注意が必要です。

検査方法

検査器具
検査器具

子宮内膜の検査も外来で十分に実施可能です。直接、子宮の内部に細い棒状の器具(下図)を挿入して細胞を採取して顕微鏡で観察する子宮内膜細胞診が一般的です。ただ、子宮の中まで器具を挿入することが難しい方もいらっしゃいますし、疼痛が強い場合もあり、稀ではありますが子宮内感染を引き起こす事例もあり、患者さまからは非常に不人気な検査で、現在米国では実施されていません。当クリニックでは極力、内膜細胞診をさけて、超音波検査で子宮内膜の厚さを測定して診断しています(下図)。

子宮体がんになると子宮内膜が厚くなることが多く、閉経後では4~5mmを超えると異常とされています。このように超音波検査は有用な検査のひとつですが、子宮内膜肥厚のない子宮体がんは発見できない可能性もあります。しかし子宮内膜細胞診も一定の確率で見逃し例があり、両検査法の診断精度は同等という報告も多数あります。これらの検査で疑わしいところがあれば、さらに細いスプーンやチューブのような器具で内膜組織を採取して診断します。これを内膜組織診といいます。

治療

治療の主体は手術療法、化学療法(抗がん剤)、放射線療法、の3つを単独、もしくは組み合わせて行います。当クリニックは治療施設でないため、詳細な治療の情報につきましては、「国立がん研究センター」の情報をご覧ください。

公益社団法人 日本産科婦人科学会HP「産科・婦人科の病気」より一部転載