不妊治療

当クリニックの理念

近年、高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を受けられる方が増えています。一方、一般的な不妊治療を適切に実施すれば、相当数の方が妊娠することも事実です。

女性は妊娠、出産できる年齢に限りがありますので、貴重な時間を無駄にしないよう注意することも必要です。当クリニックではなるべく自然に妊娠ができるようお手伝いをしながら、お一人おひとりにとって最も良い治療法を常に考えます。一般的な検査・治療を適切に行いながら方針を検討しますのでご安心ください。

もし、人工授精や体外受精・顕微授精など高度な治療が必要であると考えられる場合には、適切な時期に適切な高度生殖医療施設をご紹介させていただきます。なお40歳以上の方の場合は一般的な不妊治療が奏功しないことも多いため、最初から高度生殖医療施設を受診されることをおすすめします。

不妊症とは

妊娠を希望し、避妊せずに夫婦生活があるにもかかわらず1年以上妊娠しない状態をいいます。なんらかの治療をしなければ、それ以降自然に妊娠する可能性は低いと考えられます。

原因について

不妊原因はひとつとは限らず、いくつかの要因が複雑に重なっていることが多いため、網羅的に検査を受けられることをおすすめいたします。

女性側の原因
排卵の問題、卵管の通りの問題、子宮の問題があります。ほかにプロラクチン(本来妊娠後に上昇する母乳を作るホルモン)が高くなったり、甲状腺ホルモンのバランスが乱れることが、卵巣のはたらきに影響していることもあります。
男性側の原因
精子の問題(数が少ない、運動率が低い)と性機能障害(勃起障害、射精障害)が主なものとなります。

最初に受けていただきたい検査

当クリニックでは安全に治療を進めていけるように、不妊治療を受けられる前に重要な疾患のスクリーニングを実施しています。治療に入られる前に、以下の検査をお願いしています。

1) クラミジア抗体
クラミジア抗体が陽性の場合、現時点でのクラミジア感染あるいは過去のクラミジア感染が疑われます。クラミジア感染は骨盤内の癒着を引き起こし、卵管が閉塞する可能性もあります。
2) 子宮頸がん検診
子宮頸がんは20代でも発症します。早期に発見できれば、子宮の温存・妊娠も可能です。妊娠中に発見された場合は、妊娠分娩管理も複雑になります。なお当クリニックで受診6ヵ月以内に、子宮頸がん検診実施を受けられている場合は、検査を省略させていただきます。
3) 乳がん検診
近年、乳がんは増加しています。「乳癌診療ガイドライン」によると、授乳期に発見された乳がんの予後は非常に悪いです。また妊娠し週数がすすむほど、乳腺の構造が変化するため診断が難しくなります。
当クリニックでは、30歳以上の方を対象に、不妊治療を始められる前に、乳腺エコーによる乳がん検診をお願いしています。
4)風疹抗体検査
風疹感染が増加しています。妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんにも感染し障害を引き起こす可能性(先天性風疹症候群)があります。また風疹は男性も罹患するため、パートナーの検査もおすすめいたします。くわしくは、各自治体の風疹対策事業をご参照ください。

不妊症検査

次にいよいよ不妊になっている原因の検査です。

*原因はひとつとは限らないため、すべて検査することをおすすめします。

エコー検査
初診時に子宮・卵巣の異常がないかどうかチェックします。卵胞(卵子が入っている袋)を計測し排卵時期を予想します。
基礎体温記録
測定方法は看護師が指導いたします。
ホルモン検査
月経3日目頃に基本的なホルモン検査です。黄体期中期(高温相の7日目頃)のエストロゲンと黄体ホルモン。甲状腺機能検査も行います。
子宮卵管造影
子宮の中に造影剤を流しX線撮影をする検査。当クリニックでは実施しておりませんので、信頼できる検査実施機関をご紹介します。
フーナーテスト(性交後試験)
排卵期の頸管粘液と精子の相性をみる検査。
精液検査
ご自宅で採取していただきますのでご主人の来院は必要ありません。

治療について

検査結果から考えられる原因を解決しつつ、排卵の時期を予想するタイミング指導を行って妊娠をめざします。排卵予想は卵胞(卵巣内にある卵子が入っている袋)の大きさをエコーで計測して行います。自然の排卵がない方や、排卵がとても遅い方には排卵誘発剤を服用していただき、排卵をコントロールします。排卵誘発剤としてはクロミッドを第一選択薬としていますが、クロミッドにて子宮内膜の菲薄化や頸管粘液の減少などが問題になる場合は、セキソビットやレトロゾールによる排卵誘発も実施しています。特にレトロゾールはクロミッドやセキソビットとは作用機序が異なり、子宮内膜や頸管粘液への影響が少なく、妊娠率の向上が報告されています。ただ日本ではレトロゾールは排卵誘発剤としての保険適応はなく自費診療になります。一般的不妊治療で妊娠を試みるのは年齢にもよりますが、6~12ヵ月間が目安です。

これらの治療で妊娠しなかった場合、子宮内に直接精子を注入する人工授精、そして卵子を体外に取り出し、体外で受精させた受精卵を子宮へ戻す体外受精などの高度生殖医療へ進んでいくのが一般的です。そのような治療が必要な患者さまには、適切な医療機関を紹介させていただきます。

診療費について

自費診療の部分が多くなりますので、ご了解ください。なお不妊症の診断基準を満たさない方は原則として自費診療となります。

保険診療
初診時の内診・エコー・ホルモン検査(血液検査)
自然周期のエコー(卵胞サイズ計測など:1ヵ月に1回まで)
排卵誘発剤の処方、排卵誘発剤服用周期のエコー(1ヵ月に2回まで)
頸管粘液検査・フーナーテスト
精液検査・子宮卵管造影(他院に依頼して行うX線造影検査)
自費診療
クラミジア抗体検査(採血)
自然周期のエコー(卵胞サイズ計測など:1ヵ月2回目以降)
排卵誘発剤を服用している場合、1カ月のうち3回目以降のエコー
頸管粘液検査・フーナーテスト

その他

妊娠初期に葉酸が欠乏すると、胎児に奇形を引き起こすことがあります。妊娠前からの葉酸摂取(1日400μg)をおすすめします。総合ビタミン剤で必要量の葉酸を摂取すると、他のビタミンが過剰となることがありますが、当クリニックでは簡単に必要量をとることができる葉酸サプリメントを取り扱っておりますのでご相談ください。
また、喫煙と不妊の関係について多くの報告があります。ご夫婦ともに禁煙することをおすすめします。

不妊検査等医療費助成制度

子供を望む夫婦が早期に検査を受け、必要に応じて適切な治療を開始することができるよう、不妊検査および薬物療法や人工授精等の一般不妊治療にかかる費用の一部を助成する制度です。くわしくは東京都のサイトをご覧ください。