子宮・卵巣の病気

婦人科良性腫瘍の代表的なものとして、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣腫瘍があげられます。これらの疾患は良性であり、直接生命にかかわる病気ではありません。しかしながら中には、悪性腫瘍(がん)との鑑別がむずかしい場合があり、また子宮内膜症や卵巣腫瘍の中には、将来、がん化する可能性のあるタイプが存在することが明らかになっており、その診断・フォローアップには専門的な知識が必要です。

当クリニックでは、産科婦人科学会専門医、超音波専門医、婦人科腫瘍専門医、がん治療認定医、細胞診専門医などを取得し、慶應義塾大学病院をはじめ高次医療機関で20年以上にわたり多数の婦人科腫瘍を診療してきた医師が中心となり、診断・治療・フォローアップを実施させていただきます。

子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍で、20~50歳代の性成熟期に発症します。小さいものを含めると成人女性の約4人に1人にみられます。悪性化はまずありませんが、悪性腫瘍(子宮肉腫)との鑑別がむずかしい場合があります。またその発育様式により大きく3タイプに分類され、それらは、子宮の外へ発育する漿膜下(しょうまくか)筋腫、子宮筋層の中にできる筋層内筋腫、子宮内腔方向に発育する粘膜下筋腫です。そしてそのタイプごとに症状が違い、治療法も異なります。

頻度の高い症状としては、過多月経、月経痛、下腹痛、不正出血、圧迫感、腰痛、頻尿、便秘などがあげられます。また、無症状のものはよほど大きいものでなければ、必ずしも手術の適応にはなりません。閉経後は大半の症例でエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下にともなって縮小していきます。

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子宮腺筋症

本来子宮の内腔にある子宮内膜に類似した組織が子宮筋のなかにできる病気です。子宮内膜症も子宮内膜が違う場所にできる病気ですが、子宮筋以外の場所にできるものを指します。以前は子宮内膜症と子宮腺筋症は、1つの疾患と考えられてきましたが、最近は、発生機序が異なり別の疾患と考えられています。

強い月経痛を引きおこしたり、月経量が増加し(月経過多)、貧血になったりします。月経時以外の下腹痛・腰痛や出血をおこすこともあります。女性ホルモンの影響を受けて病気が悪くなりますが、閉経後には病変は縮小し症状も消失することがほとんどです。

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子宮内膜症

子宮内膜またはそれに似た組織が、本来あるべき子宮の内腔以外の場所で発生し発育する疾患が子宮内膜症です。20~30歳代の女性で発症することが多く、そのピークは30~34歳です。頻度の高い症状としては、月経痛、下腹部痛、過多月経、腰痛、性交痛、排便痛、不妊症などがありますが、いずれも生命にかかわる病態ではありません。しかしその治療は困難であり、非常に扱いにくい病気です。また中には将来、がん化する可能性があることが報告されており、その治療・フォローアップには細心の注意が必要です。子宮内膜症ができやすい場所として、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などがあげられます。まれではありますが肺や腸にもできることがあります。

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卵巣腫瘍

卵巣に発生する腫瘍で、卵巣には細胞分裂が盛んなさまざまな細胞が存在するため多種類の腫瘍が発生します。一般的には無症状であることが多いのですが癒着が生じたり、大きくなると腹部のぼうまん感、下腹部痛、性器出血、便秘、頻尿などの症状が生じます。中には卵巣腫瘍茎捻転(けいねんてん)といって、卵巣腫瘍がおなかの中でねじれてしまい、その腫瘍に卵巣を養うために送られていた血液が来なくなって腫瘍が壊死(えし)に陥り、炎症などが強くなって強烈な痛みが現れることもあります。

卵巣腫瘍を発見した場合、重要なポイントは良性か悪性の鑑別です。卵巣の細胞や組織は子宮とは異なり外から採取することはできず、腫瘍マーカー(CA125など)や画像診断(超音波検査・MRI検査など)が診断の上で参考になりますが、最終診断は手術以外に方法はありません。また前述しました子宮内膜症が卵巣にできたチョコレートのう腫は将来がん化する可能性があり、とくに注意が必要です。

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